バイエル社が持続可能な計画プラットフォームを構築し、柔軟な意思決定に活用

少し前まで、世界的なライフ サイエンス企業であるバイエル社では、四半期および年間計画会議に向けた資料作成のために複数の手順を踏む必要がありました。 資料作成を担当する同社のコーポレート管理チームは、始めに部門別、機能別、および企業全体の計画システムから情報を集め、KPIを計算し、データを解釈し、それを決められたフォーマットにまとめて、計画会議に参加する役員やシニア マネージャーが事前に読むための資料冊子を作成していたのです。「冊子には管理チームの責任者がペンで署名をしていました」。バイエル社のコーポレート管理チームで財務モデリング及び分析部門の責任者を務めるフィリップ・アーレント氏はそう振り返ります。「このプロセスには5～6日を要し、その途中で何か変更事項がある場合には始めからやり直す必要がありました。しかし、今は違います。2020年の半ばに初めてシステム上で財務プレゼンテーションを開始し、2021年からはすべての計画会議をこの形で行っています」

Anaplanは議論をこれまで以上に有意義なものに変えました。会議では、管理チームの責任者が、財務状況や潜在的なシナリオをAnaplanのダッシュボードを使って参加者に説明します。これは、バイエル社のデジタル化の取り組みにとっても大きな前進と言えます。印刷された冊子に手書きの署名という形から、Anaplanのテクノロジーに基づくデジタル ソリューションへと移行したことは、バイエル社における計画・意思決定プロセスの大きな変化を象徴しています。そして、コーポレート管理チームがその進化を通して、同社のデジタル化戦略に前向きな影響を及ぼしたということを示しているのです。

コーポレート管理チームが目指すアジリティと持続可能性

ドイツに本社を構え、510億ドル規模の売上を誇るバイエル社は、1863年の創業からイノベーションの歴史を積み重ねてきました。クロップ サイエンス部門、医療用医薬品部門、医療用医薬品部門の3部門があり、グループ共有のSAPプランニング システムの中で、各部門が財務計画を立てています。「当社は部門ごとに事業内容が大きく異なるため、それぞれが異なる粒度のデータを使って計画を立てています」とアーレント氏は説明します。「それでも、コーポレート管理チームがバイエル社の全ての部門および機能の財務計画プロセスを管理しているため、各部門の計画は、そこから一貫したデータを作成できるよう、統合や調整が可能なものである必要があるのです」

計画プロセスには、バイエル社が翌年の計画を立て、3年間の財務的な見通しを設定する年次 運営計画会議（OPC）、10か年計画を作成し、投資、売却、合併、買収、およびそのほかの戦略オプションを分析する年次 戦略会議 （StraCo）、そして四半期ビジネス レビュー （QBR）が含まれます。これらの会議があるごとに、管理チームのメンバーは手作業で作成した長いプレゼンテーションを行い、その大半にスプレッドシートやプレゼン作成ツールを使用していました。「もっとアジャイルで、効率的で、持続可能なソリューションを必要としていました」とアーレント氏は言います。

完全な統合を実現した財務モデルの構築

管理チームはまず、長期的な財務計画（StraCo）に使えるソリューションを求め、インテリジェントな設計のツールを導入しました。そしてすぐに、その1つのシステムを、企業全体の財務計画に応用できることに気づいたのです。その新しいツールには多くの条件が求められました。バイエル社では、データの取得が各グループの計画およびレポート作成システムから行われ、データの粒度にもばらつきがあります。そのため、新しいツールは柔軟な構造をもち、SAPのデータ ベースに接続可能なものである必要がありました。ニーズの変化に対応するため、外部からの専門サポートを必要としないことも重要でした。管理チーム内だけですべての問題を解決できれば、アジリティが大幅に向上するからです。さらに、数字や、それを基にした仮説とのつながりが透明であることが求められました。これにより、部門別の計画を単に統合するだけでなく、シナリオや精度を設定したグループごとのビジネス ケースのシミュレーションも可能になります。

「私たちが求めていたのは、すべてがつながり、完全に統合された財務モデルでした」とアーレント氏は語ります。「つまり、1%の数字の変化を入力するだけで、売上、売上原価、キャッシュフロー、及び純有利子負債への影響を速やかに確認できるツールです」

2019年が終わりに近づく頃、アーレント氏とプロジェクト チームのメンバーは、Anaplanと共に概念実証の構築を始めました。その結果が共有されると、管理チームの全員はすぐにその性能に納得しました。チームは速やかにAnaplanのモデリング アプローチへと乗り換え、1週間後には利用可能な最初のモデルが完成していました。

現在、バイエル社のコーポレート管理チームはAnaplanで複数の財務モデルを運用しています。これらのモデルには同じ計算ロジックが使用されますが、異なる時間軸をもち、QBRでの四半期ごとの予測から、StraCoでの10年間の見通しまで、あらゆる計画プロセスに対応が可能です。さらに、これらの各プロセスについて、モデルに加えて専用アプリが作成され、会議中のディスカッションや意思決定を可能にしています。

それぞれのアプリには共通のユーザー インターフェースが用いられ、純売上高、EBITDA、フリー キャッシュ フロー、1株当たり純利益、純有利子負債などの関連するグループごとのKPIが共有されます。「Anaplanなら、魅力的なインターフェースであらゆる財務情報をいつでも確認できます」とアーレント氏は語ります。

シナリオと精度の設定は、「魔法が起こる場所」というアーレント氏の言葉からも分かるように、バイエル社の財務モデルにおける重要な要素です。シナリオを有効化・無効化したり、精度を調整したりすることで、ユーザーはあらゆるビジネス ケースをシミュレーションできます。デジタル ソリューションを使うことで、仮説を変更した場合にも、すべてのKPI項目における財務的な影響をすぐに確認できます。

Anaplanのシミュレーション力が特に発揮されるのが、役員たちが合併や買収、投資や売却の可能性について話し合うStraCo会議です。「以前は、すべての計算を終えた後に導かれる提案内容をStraCo会議で発表していました」とアーレント氏は振り返ります。「異なる条件や価格の場合について質問されると、プレゼンターはその影響を計算し直す必要があり、質問に回答できるのは会議が終わった後でした。今では、Anaplanのツールで数字を変更するだけで、ビジネスへの財務的な影響を1分以内に確認できます」

効率性、エンパワーメント、そして信頼性

コーポレート管理チームにとって、この新しいソリューションの最も明確なメリットは、計画プロセスに必要な資料の準備が迅速に行えることです。「冊子をまとめていた頃には5～6日かかっていた作業が、今では3日程度で完了できます」とアーレント氏は説明します。手作業でのデータ収集および集計が不要になったことで、チームのメンバーは、データの定性的な分析や、プレゼンテーションの流れを考えることに時間を使えきます。

効率の向上もさることながら、このインタラクティブなモデルは思考やディスカッションを促すという点においてもはるかに優れた製品です。バイエル社の経営陣の中の最高責任者も、この大きなメリットをすでに実感しています。「Anaplanを活用し、すべての役員メンバーに対してデジタル プレゼンテーションを行ったことは大きな前進です」とアーレント氏は言います。「CFOからも、それぞれの選択による財務的な影響をすぐに把握できたことでより良い議論ができ、それがより良い意思決定につながったとフィードバックを受けました」。 変わりゆくビジネスの状況に対して、自信を持って迅速に対応できるのは、数字や、それを基にした仮説の透明性が信頼を生んだことの直接的な結果と言えるでしょう。

また、この新しいソリューションはコーポレート管理チーム自体の自信を向上させました。「チーム全員がすぐにAnaplanを使いこなし、成果を体験できました」とアーレント氏はまとめます。「誰もが強力なツールを手に入れたと感じていました。そして、同僚たちの創造力を見られるのは素晴らしい体験でした。チームの規模は小さくとも、Anaplanの財務モデルがあれば大きな影響力を持てるのです」