組織の成長のために戦略とオペレーションのギャップを埋める方法

AUTHOR

Brian Kober

Chief Strategy Officer and Chief of Staff

計画をパフォーマンスに結びつけて組織の潜在力を引き出し、戦略とオペレーションのギャップに隠された力を解放しましょう。

「実践なきビジョンは妄想に過ぎない」。トーマス・エジソンの名言です。

しかし、時代の先を行く知性を備えていたエジソンも、ビジョン (戦略) と実践 (オペレーション) の断絶が今日の多くの組織にとって重大な課題になるとは知るよしもなかったでしょう。

Enterprise Decision Excellence Report™ 2024 (2024 年エンタープライズ向けディシジョン エクセレンス レポート)」では、意思決定におけるコネクテッドネスの力に着目し、組織のコネクテッドネスについて以下の主要な 3 要素を調査しました。

  • 縦方向:経営陣から現場
  • 横方向: 職務、事業部門の横断
  • 外方向: サプライヤー及び顧客

そしてさらに詳しく検討した結果、縦方向のコネクテッドネスの主要素は、戦略計画とオペレーション計画を結びつける能力であるとわかりました。また、エジソンが示唆しているように、この結びつきがなければ戦略的ビジョンはただの幻想になってしまい、オペレーションの秩序が崩壊することも判明しました。しかし、多くの組織は、いまだにこのような連携の確立をなかなか実現できずにいます。
 

戦略とオペレーションのすり合わせの課題   

適切な戦略の策定は、それ自体が課題です。最近の PwC のレポート (英語) によれば、調査参加者のうち社内で明確な戦略を定めている割合はわずか 37% に過ぎず、その戦略が成功につながると考えている参加者も 35% に留まっていました。さらに、この最初のハードルを乗り越えたとしても、戦略上の計画とオペレーションの実情を結びつけようとすると別の課題が生じます。

Anaplan の調査にて、戦略とオペレーションの結びつきを強める鍵は、質の高い財務計画とオペレーション計画を策定することにあるとわかりました。結びつきを実現した (コネクテッドな) 組織は、「きめ細やかさ」、「測定可能な KPI」、「唯一の情報源を構成する適切かつ正確なデータへのアクセス設定」という 3 つの難問を乗り越えていたのです。

また、多様な地域や市場へ進出するとメリットが得られるものの、戦略計画とオペレーションの実践を結びつける取り組みが一層困難になってしまいます。文化の違いや言語の壁が障がいとなるため、各チームに戦略の方向性と実行可能なステップを周知する「具体性」と、市場ごとのダイナミクスに対応する「適応性」とのバランスを一層慎重に保つ必要があります。
 

ギャップに注意する  

戦略計画とオペレーション計画の断絶は一般に「戦略と実践のギャップ」 (英語) と呼ばれており、広範囲に悪影響を及ぼしかねません。このギャップが極大化した状態では、リスク又はチャンスの存在する領域を特定するための情報がモデルにも計画にも欠けているため、失敗の原因究明も成功の再現もほぼ不可能になってしまいます。

また、会社としての方向性を統一することも難しくなるため、リソースの浪費や重複が起きやすくなり、チーム間や地域間であつれきが生まれてしまいます。  

今回の調査に参加いただいたあるエグゼクティブからは、次のような率直な意見が聞かれました。「戦略目標を特定の市場ごとに分割するのは困難です。地域社長がすべての損益を握り、全ブランド共通の企業目標に反して各ブランドの成果を無視するようになるからです」

社内抗争 (あるいは単純な足並みのずれ) は、地域や市場レベルに限られたものではなく、製品グループや営業グループでもよく見られる問題です。戦略案にこめられた意味が組織の各ビジネス機能に伝わっていない場合、実践とオペレーション間の整合性がなくなり、他社に苦戦するだけでなく需要を満たすこともできなくなってしまいます。

今回の調査では、この影響が明確に示されました。コネクテッドネスに欠ける組織は、コネクテッドな組織に比べて決定の質が低く、結果として業績も大きく下回ることがわかったのです。
 

コネクテッドネスの力を解放する

裏を返すと、本レポートでは、組織のコネクテッドネスのレベルが高いほど意思決定の質も高まり、結果として業績が向上することも明らかになりました。

ただし、財務上の利益は最終的な戦略目標ではあるものの、コネクテッドネスのメリットはそれに留まりません。戦略計画とオペレーション計画を結びつけることで組織の可視性が高まり、チャンスにも脅威にも迅速に対応できるようになります。経営幹部にとっては、こうして組織内の足並みを揃えることで、戦略目標と財務目標の両方の進捗を早期に認識しやすくなる効果があります。

顧客や市場の動向に働きかけようとする場合、これはきわめて重要です。競合他社に先んじてこれらの兆候に気づくことができれば、対応でも先手を取り、競争力を高められます。

さらに、あらゆる部門、市場、地理的領域、個人 (CEO から現場スタッフまでの全員) が、戦略目標を達成するうえで時間とリソースを注ぎ込むべき領域を確実に把握できるようになります。こうして戦略に対する認識が深まると、目標到達に向けた責任共有の意識がチーム メンバーに芽生えます。

それだけでなく、進捗の妨げになる障がいが生じた際に、各メンバーが懸念を表明しやすくなります。成功の鍵は往々にしてラスト マイルにあります。つまり、最終的に戦略の成否を決定するのは、顧客と接する現場社員や製品デザイン、サプライヤーであるということです。
 

戦略と実践を実現するためのポイント

戦略を明確化し周知する: 言うまでもないことのように思えますが、軽視してはいけません。まず CEO と首脳陣のトップ レベルで戦略および計画に関する意見をまとめ、組織全体に周知して理解を確保しましょう。その後、現場の倉庫担当、サービス担当、営業担当の各チームにたどり着くまで、合意済みの目標や戦略的目的をレベルごとに順番に伝えていきます。

フィードバックを奨励する: 一方的に伝えるのではなく、あらゆるレベルのチームと対話することが重要です。これにより、戦略目標をオペレーション レベルまで伝播させやすくなるだけでなく、計画を従業員が深く理解しやすくなります。

相互に支え合う枠組みを設ける: こうすることで、組織内での業務上のあつれきを抑えるとともに、あらゆるレベルの従業員に助け合いの関係を認識させ、戦略の成功のために達成すべき KPI を周知できます。

測定可能な KPI を設定する: 戦略目標に合わせた KPI を設定するとともに、好成績の領域および改善の必要な領域を素早く特定できるよう進捗を定期的に追跡、検討します。

強固なビジネス モデルを策定する: 主なバリュー ドライバー、収益源、コスト構造、オペレーションの指標を把握しモデル化することで、経営チームが市場の変化を正確に予測し、リソースを効率的に配分して、成長を促進できます。

柔軟性を持つ: ビジネスに混乱は付きものです。そのため、戦略計画とオペレーション計画に適応性と柔軟性を重視する文化を組み込むことで、市場のダイナミクスの変化や急に訪れたチャンスにも迅速に対応できるようになります。

戦略計画とオペレーション計画の連結は、単なる理論上の概念ではありません。企業としてアジリティを高め、イノベーションを加速し、持続可能な成長を目指すのであれば、事実上不可欠な要素です。

コネクテッドネスを育むには、組織が一丸となって努力しなければなりません。しかし、可視性と効率性の向上や方針の統一といったメリットは、その労力に十分見合うものです。さらには、エジソンが電球を発明したように、組織にとって新しい発見と共に飛躍の瞬間が訪れることもあるでしょう。

戦略とオペレーションを結びつけ業績を向上する方法について、詳しくはディシジョン エクセレンス レポート本編をご覧ください。