GAAP 連結ルールの遵守と影響
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GAAP 連結ルールと、それが透明性と信頼性の高い財務報告に与える影響について解説します。
リスクが高く、エラー許容度がきわめて小さい企業財務においては、一般に公正妥当と認められた会計原則 (GAAP) に基づいた連結のように、入念な会計処理が欠かせません。GAAP は、透明性と信頼性の高い財務報告を保つための会計フレームワークです。この記事では、GAAP 連結について、その用途、基本原則、財務チームにとってのメリットを中心に解説します。
GAAP 連結のもたらす意味
米国における GAAP とは?
GAAP は、米国財務会計基準審議会 (FASB) が発行している、会計のベスト プラクティスと基準をまとめたものです。これらのルールは、米国の株式公開会社が財務諸表を作成および提示する方法のガイドとして使用されています。非公開会社の中にも、財務諸表の正確性と透明性を高めるために、自主的に GAAP ガイドラインに準拠しているところがあります。
GAAP 連結とは?
GAAP 連結とは、親会社が GAAP ルールのガイダンスに従って財務連結を行うことを指します。財務連結では、組織内の複数の事業部門の財務や投資を一つの財務諸表にまとめます。GAAP 連結の主な目的は、連結会計に対して信頼性と透明性の高いアプローチを確保することです。
GAAP 連結の基本原則
GAAP では、次の 10 の基本原則を推進しています。
- 規則性: 財務チームは、すべての GAAP のルールと規則を完全に遵守しなければならない。
- 一貫性: 財務チームは、報告プロセス全体にわたって同じ基準を適用しなければならない。
- 誠実さ: 財務チームは正確で公平な会計を採用しなければならない。
- 手法の永続性: 財務チームは、財務の文書作成と報告に対して一貫性があり比較可能なアプローチを採用しなければならない。
- 非補償: 財務チームは、債務補償の見込みがない場合は、良い業績と悪い業績の両方を報告しなければならない。
- 慎重さ: 財務チームは、事実に基づいた、曖昧さのない財務情報を提供しなければならない。
- 継続性: 資産を評価する際は、企業の活動が中断されることなく継続されることが前提となる。
- 周期性: 収益の提示は、定義された会計期間にわたるものでなければならない。
- 重要性: 財務チームは、関連するすべての財務情報を一切隠さず完全に開示しなければならない。
- 最大善意: 関与するすべての当事者がうそ偽りなく行動していることが前提となる。
GAAP 連結基準が重要である理由
連結そのものは親会社の成功にとってきわめて重要です。連結によって、企業の経済的業績、安定性、将来の見通しをあらゆる角度から把握できるためです。これらの知見により、投資家と利害関係者の両方が十分な情報に基づいて投資に関する意思決定を下すことができます。その他のメリットとしては、貸借対照表の精度の向上、親会社の監督の向上、財務データ管理の強化などが挙げられます。
GAAP の基準に従うことで、企業は全体的に透明性と一貫性の高い連結プロセスを確保し、連結のメリットを最大限に引き出すことができます。
GAAP 連結の範囲
ASC 810 とは?
会計基準コード化体系 (ASC) 810 は、FASB の会計基準のセクションの一つです。このセクションでは、どのような場合に会計報告主体が別の法人を連結する必要があるかを判断する方法が定義されています。このフレームワークはいわば、事業体に対する支配を評価するためのルールを概説したもので、GAAP 連結の重要な参照資料となります。
GAAP に従って連結するべき状況
GAAP に準拠する企業または会計報告主体は、支配財務持分を保持しているすべての法人を連結する必要があります。親会社が当該法人に対してどの程度の支配力があるかに基づいて、主に二つの連結モデルがあります。議決権持分事業体モデルと VIE モデルがそれで、ASC 810 にこの二つのモデルに基づく連結について具体的なガイドラインが提示されています。
議決権持分事業体モデル
このモデルは、報告主体が主に議決権の過半数を保有することで当該法人を支配している場合に使用されます。言い換えると、報告主体は対象法人の財務および営業上の決定に対して完全な権限を持ち、そのため対象法人を直接連結することができます。
変動持分事業体 (VIE) モデル
このモデルは、報告主体が変動持分事業体 (VIE) に対して変動持分を保有している場合に使用されます。変動持分は、報告主体が対象法人の経済的利益と損失を受けるビジネス上の取り決めです。
つまり、変動持分事業体は、事業を運営するための十分な意思決定権を持っていません。VIE の特徴としては他にも、十分な株式投資を有していない、実質的な議決権がない、財務損失を吸収する義務が限られている、残余利益を受け取る権利が限られているといったことがあります。
報告主体が VIE に変動持分を保有していると判断した場合、次に行うべきことは VIE の主たる受益者を特定することです。
主たる受益者
主たる受益者は、以下を保有することで VIE の支配持分を保持している受益者です。
- VIE の経済的業績に重大な影響を及ぼす可能性のある決定を下す力
- VIE の損失を吸収する義務または大きな利益を受け取る権利
報告主体が主たる受益者であると判断された場合、報告主体は VIE の財務を連結する必要があります。反対に、報告主体が主たる受益者でない場合は、VIE の財務諸表を連結してはいけません。
代わりに、VIE の財務は別個に維持されますが、報告主体は VIE への関与について連結財務諸表で適切な開示を行う必要があります。これらの開示には、保有する変動持分と、持分契約に関連するあらゆるリスクと報酬などが含まれます。
GAAP と IFRS の比較
GAAP 連結ルールは、国際財務報告基準 (IFRS) とよく比較されます。国際会計基準審議会 (IASB) によって策定され、世界中のさまざまな国で使用されている IFRS 会計ルールでは、信頼性と説明責任のある財務報告が重視されています。以下では、米国における GAAP と IFRS の類似点と相違点について説明します。
類似点
- GAAP と IFRS はどちらも、明確で透明性があり、比較可能な連結財務諸表を要求している
- どちらのフレームワークも、報告会社が議決権の過半数を所有していることで支配している事業体を連結することを要求している
- どちらのフレームワークも、先入先出法 (FIFO) と加重平均法による棚卸資産評価を許可している
相違点
以下は、GAAP と IFRS の主な違いの概要です。
アプローチ
GAAP は細則主義で、会計実務に関する具体的なガイドラインを提供しています。
IFRS は原則主義で、具体的なルールはあまり多くなく、より広範な枠組みを提供しています。
棚卸資産
GAAP では、棚卸資産会計方法として後入先出 (LIFO) の使用が許可されています。
IFRS では LIFO 手法の使用は許可されていません。
管轄
GAAP は FASB によって策定され、米国でのみ使用されます。
IFRS は IASB によって策定され、欧州やアジアのさまざまな国で使用されています。
過去の減損の戻し入れ
GAAP では、企業が過去に計上した減損を戻し入れることは許可されていません。
IFRS では、市場価値が上昇した場合、企業は過去に計上した減損を戻し入れることが認められており、実質的に棚卸資産評価額を元のレベルに戻すことになります。
キャッシュフローの分類
GAAP では、受取利息、支払利息、受取配当金に関連するキャッシュフローは会社の中核的な営業活動によるものとみなされ、支払配当金は財務活動によるものとみなされます。
IFRS では、企業はすべての利息と配当金を営業キャッシュフロー又は財務キャッシュフローに分類するオプションがあります。
資産の再評価
GAAP では、資産の再評価は通常、投資や株式などの市場性のある有価証券に限定されます。GAAP では、企業がこれらの資産の帳簿価額を更新して現在の公正市場価値を反映することが許可されており、これにより帳簿価額が変更される場合があります。
IFRS では、より広範囲の資産の帳簿価額を公正価値に基づいて調整できる柔軟性があり、これにより財務諸表が影響を受ける可能性があります。
透明性と信頼性の高い財務報告のカギ
つまるところ、GAAP 連結は、透明性、一貫性、説明責任のある財務報告を確保するうえで有用なのです。GAAP は、公的機関の財務部門に合理化をもたらすだけでなく、GAAP に準拠している民間企業における財務報告の透明性も確保します。さらに、GAAP に準拠する企業は、財務状況を包括的に把握できるため、投資家や利害関係者による十分な情報に基づいた意思決定にも寄与します。
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