将来を見据えたファイナンス ワークフォースの定義
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意義と影響力のある仕事ができるようにスキル、ツール、目標を調整して、将来に対するファイナンス部門の準備を万全に。
先日、Wall Street Journal の記事が金融業界における憂慮すべき傾向について報じました。(英語)米国では多くの会計士が退職を考えていて、既に 30 万人以上の会計士や監査人が職を離れたというのです。
「クワイエット クイッティング (静かな退職: 最低限の仕事しかせず職にとどまる)」という言葉を耳にするようになってから 1 年ほどになりますが、会計士たちは本当に退職しているようです。
それ自体十分に良くない状況ですが、記事では、定着の問題はファイナンス部門が直面している課題の一部にすぎないことを示唆しています。
「会計士を必要としている企業の数と習熟したプロフェッショナルの数に大きなギャップがあり、それによって賃金が上昇し、この分野に参入する臨時労働者が増えている。しかし、どちらの増加も、人材パイプラインの根本的な問題を解決する手立てにはならないだろう。経理の仕事に就きたいと考えている大学生は多くないのだ。会計学を専攻した学生でさえも。」
Wall Street Journal がインタビューしたある大学生は、「現金収支の調整のような反復作業ばかり」であることに不満を漏らしていました。この学生はデータ分析の授業のほうが充実していたと話しています。
これが聞き覚えのある話だったり、経理/財務部門内の似たような会話に思い当たる節があったりするなら、今いる人材を最も深く引き付けるものは何か、将来も充実して働き続けるために必要なものは何なのかを考えてみたほうがよいかもしれません。私はこれを将来を見据えたファイナンス ワークフォースと呼んでいますが、このことが CFO のアジェンダで最上位に挙げられていないなら、ぜひとも最優先に検討すべき項目だと考えます。
財務や経理で働く意味を追い求めて
財務/経理部門の労働環境を変える必要があるという裏付けは、少数のインタビューやエピソードに限られるわけではありません。コンサルティング会社の Deloitte は昨年、財務のプロフェッショナルに、キャリアで最も重視していることを聞き取る(英語)調査を実施しました。
回答の 1 位が「報酬」だったことは皆さんも想像できたでしょう。でも、2 位はどうでしょう。2 位は「有意義な仕事」でした。調査対象者の 28% がそう回答したのです。「有意義な仕事」は、「評価」(回答者はわずか 6%) や「昇進」(10% 未満) など、上位にランクすると考えられそうな他の要因よりもはるかに重視されていました。
言い換えれば、経理や財務の担当者が仕事に意義を感じているなら、大きな昇進を望んではいないのかもしれません。自分のスキルを高め、組織にもっと大きな価値をもたらすことが望みである可能性があるのです。
「人は、自分のスキルを活かせ、やる気が湧くような活動に従事しているときに、最も積極的になり、生産性が高まるものだ。組織が従業員をスキルの活かせる仕事につなげば、結果として高いエンゲージメントと生産性を実現できる可能性が高まる」と Deloitte レポートの筆者は述べます。「役職ベースからスキルベースのファイナンス組織へ移行することで、ワークフォースが自ら能力を磨き、社内の流動性を高める文化を確立できるようになるだろう。」
将来を見据えた財務ワークフォースの To Do リスト
誇らしさや華々しさで競い合うような方法で財務や経理の役職を育成するのは難しいように思えるかもしれません。しかし、ファイナンス情報を理解し、企業戦略の指針を与えることができれば、組織が成長し成功する力を変革することができます。ファイナンス以外のすべての部門のリーダーが目標をより達成しやすくなることにもつながります。容易ではありませんが、重要です。
これらのことを念頭に置けば、財務リーダーに求められるアクションはこれ以上ないほど明確になります。
1.従業員エクスペリエンス指標に目を向け、それに基づいて行動する
将来を見据えたファイナンス ワークフォースとは、リーダーが時間をかけて、このような価値が明確に理解されている文化をチーム内に育み、従業員に提供するエクスペリエンスを基盤としてそれを明確に強化しているような人材です。
「従業員エクスペリエンス」とは、単に従業員が初日に歓迎されるときや、辞表を出した後に一種の事後分析として行われる退職者面談のときのことだけを意味しているのではありません。従業員エクスペリエンスは、従業員が組織で経験するすべてのことにわたり、普段目にするもの、考えるもの、感じるものも含まれます。
正式なアンケートでもよいし、チーム会議や 1 対 1 の進捗確認で軽く意見を聞くのでもよいですが、チームに時間を費やしている領域について尋ねてみましょう。間違ったエリアに時間を費やしていると指摘する必要はなく、スキルを最大限に活かせているかどうかを聞き出します。メンバーが、より大きな貢献ができていると感じている領域を探りましょう。そして、どのような種類のツールがあればチームを最も良く支援できるかを考えましょう。
2.キャリア開発と人員採用の戦略に役立つ情報収集としてスキル監査を実施する
組織によっては、財務/経理部門の人材補充が、人員削減を試みていない唯一の領域であることがあります。経済に吹き荒れる逆風により、あらゆる業界のリーダーが、配置した人材やスキルと、それがビジネス ニーズを満たすのに十分かどうかを検討する必要に迫られています。
Fortune 誌の最近の記事で指摘されているように、ニュースで報じられている大量のレイオフは、経理や財務の職に就く人材の変化の始まり(英語)となる可能性があります。
「ほとんどのファイナンス部門は、私のように会計、リスク、管理といったバックグラウンドを持つ人材で構成されていましたが、現在 CFO が求めているのは、はるかに高い技術技能、データ分析スキルを持つ人材です」と、インタビューを受けた CFO の一人は語っています。この記事では、クラウド コンピューティング、人工知能、自動化全般の利用が増大するだろうと予測されています。
将来のスター人材に目を光らせながら、既に雇用している人材の育成にも着手しましょう。そのためには自動化も検討する必要があるかもしれません。自動化を図れば、新スキルの取得やスキルアップを阻害するおそれのある手作業やミスしやすい作業から人材を解放できます。
3.機能的目標と組織的目標に沿ってワークフォースを調整する
業界や会社の規模を問わず、ファイナンス リーダーが業務の最新化を望んでいる領域は、ほぼ一貫して、決算処理です。
市場調査会社 Gartner が実施した 2022 年 CFO 調査(英語)の結果を見ると、多数の回答者が挙げた目標は、より迅速でリアルタイムの決算 (86%)、よりコストの低い決算 (68%)、エラーのない決算 (64%) でした。これについては、未来はそれほど遠い先ではありません。いずれも、ファイナンス リーダーが 2025 年までに達成できると見込んでいる目標です。
Gartner 自身は、完全に自動化された決算処理がすぐに実現する可能性は低いと述べています。一方で、財務部門や経理部門が他の目標を達成するために必要な、ファイナンス部門が所有できる専用ソリューションは、既にあります。ところが、そこにはテクノロジーの課題があります。ほとんどの組織では、依然としてレガシー ソリューションを使用しているか、もっと悪い場合には、依然として Excel が活用されています。これらの時代遅れのツールは、反復的な単純作業の必要性を長引かせ、「意義のある仕事」を行う能力を阻害する傾向があります。使いやすく維持しやすい最新のツールをワークフォースに提供することは、将来に対する準備を従業員に整えさせ、チームが「意義のある仕事」をできるようにするための第一歩だと言えます。
結論:仕事を定義する価値
将来を見据えたファイナンス ワークフォースとはどのような人材でしょうか。それは、リーダーが仕事に意義を感じさせているチームです。メンバー全員がビジネスの変化に応じてスキルを継続的に磨く意欲を持っているグループです。組織の最大の目標に取り組める最新ツールを備えた部門です。
これが、私が今日ここで定義したものです。でも、この数年で学んだことがあるとすれば、それは未来がまったく予想もしない形で進化するということです。CFO にとっては、次に何が起きても対応できるように、将来を見据えたワークフォースでファイナンス部門を最新化することが何より重要になるでしょう。