ディシジョン エクセレンスの解明: 戦闘機パイロットの精神をビジネスに活かす
空の格闘戦から役員会議室まで: ジョン・ボイド大佐の OODA ループとディシジョン エクセレンスを引き出す秘訣
「生き残るのは、どれほど速い変化にも対応できる者である」と、アメリカの隠れた英雄の 1 人、ジョン・ボイド大佐は断言しています。
ボイドは、映画『トップガン』 さながらに、破天荒なパイロットとして、また、米空軍内の先駆的な思想家として頭角を表しました。史上最高の戦闘機パイロットの一人として称えられており、無類の操縦技術と機略により、参加したどの格闘戦でもわずか40秒以内に勝利を収めることができたため「40秒ボイド」という呼び名がつきました。後にボイドは教官へと転身し、何百人ものパイロット志望者にその卓越した飛行の極意を伝えました。
ボイドは、知性と直感に導かれて「エネルギー機動性理論」を提唱し、この画期的な理論によって軍用機の設計に革命をもたらし、ジェット戦闘機の象徴とも言える F-16 を生み出しました。イノベーションの追求に不屈の精神で挑むボイドは、その後さらに、軍民を問わず、組織が戦いの混乱の中で、いかにして複雑な意思決定に対応しているのかの理解に取り組みました。
OODA ループ
ボイドは、意思決定のダイナミクスを深く掘り下げ、生み出したのが Observe (観察)、Orient (状況判断)、Decide (意思決定)、Act (実行) の頭文字をとった OODA ループです。この意思決定サイクルは、生死を分ける格闘戦において極めて重要であり、効果的な意思決定のブループリントとなりました。
ボイドによれば、戦いに従事する戦闘機のパイロットであろうと、競争の激しい市場で鎬を削る組織であろうと、戦う相手よりも速くループを通過することが成功の鍵です。
しかし、この原則を大規模組織に適用することは、特に導入段階で課題をもたらします。組織全体で高水準の意思決定を実現するには、適切な文化を醸成し、適切に多様性がある人材を育成し、適切なツールを揃え、適切なトレーニングを提供することが必要です。意思決定サイクルを速やかに回し、これらの課題を克服することに長けた組織が、戦略的優位性を獲得します。
「CEOの役割は、すべての意思決定を行うことではなく、意思決定が効果的に行われるような環境を整えることです」
– ニティン・ノーリア (Nitin Nohria) 氏、ハーバード ビジネス スクール (HBS) ジョージ F. ベイカー・ジュニア記念講座教授、元HBS学長
ボイドの OODA ループ理論は、ビジネス スクールや企業研修で確立されているにもかかわらず、意思決定術は未だ完成していません。
マッキンゼーが1,200人のエグゼクティブを対象に行った調査「Decision Making the Age of Urgency (緊急の時代における意思決定)」では、回答者自身の組織が意思決定に優れていると考えている回答者はわずか 20% でした。さらに、自分の組織が適切な意思決定を行っていると感じているのは 57% に過ぎず、マッキンゼーが指摘するように、コイン投げで判断した場合と大差ありません。
ディシジョン エクセレンスの解明
ボイドの知見とマッキンゼーの調査を合わせて考えると、企業を経営する上で、ディシジョン エクセレンスはどれほど重要なのか、優れた意思決定の技術は数値化できるのかという、極めて重要な疑問が浮かび上がります。
私たちは、「Anaplan Enterprise Decision Excellence Report™ 2024 (Anaplan エンタープライズ向け意思決定のエクセレンス レポート、2024年)」を作成するための調査を実施し、この問題を掘り下げました。優れた意思決定が優れた成果をもたらすことは明らかだと思われますが、ディシジョン エクセレンスがなぜ重要であるかだけでなく、組織全体で優れた意思決定を実現するためにエグゼクティブはどうすればよいのか、また、それらの意思決定が財務に与える影響はどのようなものなのかを理解したいと考えました。
調査の結果、意思決定を改善するには、エンタープライズ コネクテッドネスが基盤になることが明らかになりました。Anaplan では、「エンタープライズ コネクテッドネス」を、組織のオペレーションが縦方向にも、横方向にも、また外部ともリンク又は統合されていることであると定義しています。
これを測定するために、各回答者の組織のコネクテッドネスに関して 60 の質問を行い、回答をエンタープライズ コネクテッドネス指数にプロットしました。
また、同じ方法で、意思決定の質、スピード、効率の面でのエンタープライズ コネクテッドネスについても質問しました。その結果をディシジョン エクセレンス指数にマッピングし、四分位に分割しました。上位25%を「リーダー」、下位25%を「フォロワー」としました。
ディシジョン エクセレンスの力
調査結果は、コネクテッドネスの有効性を強く示すものでした。エンタープライズ コネクテッドネスによってディシジョン エクセレンスが改善した組織は、株主総利回り (TSR) で同業他社を 6.1 ポイント上回りました。上位 1,000 社の平均時価総額が 700 億ドルであることを考えると、この価値の上昇は 40 億ドルに相当します。
さらに目を引くのは、ディシジョン エクセレンスのリーダーとフォロワーとを比較すると、TSR に 14 パーセンテージ ポイントもの差があり、これは 100 億ドルに相当します。
エンタープライズ コネクテッドネスについてさらに深掘りし、Anaplan によってエンタープライズ コネクテッドネスがどの程度高まるかを調査しました。結果として、Anaplan のお客様は、組織全体でより優れた意思決定を行うことができ、Anaplan を使用していない組織よりも業績が常に上回っていることがわかりました。
Anaplan を広範に使用している企業は、エンタープライズ コネクテッドネスのスコアが 12% も高いことがデータで示されました。その結果、ディシジョン エクセレンスが 4.7 ポイント向上し、TSR が 2.8% 改善しました。これは 20 億ドルの価値に相当します。
Anaplan を使うと、この連環全体をジョン・ボイドの OODA ループに当てはめて、現在の組織のパフォーマンスをコンテキスト化し、将来の結果を予測できます。それを基に、より迅速かつ正確な意思決定を行い、成長の促進、コストの最適化、リスクの軽減を図ることができます。
広範な連携を確立することで、組織は複数のシナリオをモデル化して評価できます。その結果、優れた意思決定を行い、自信を持って素早くアクションを起こすことができます。それが、OODA ループのプロセスを速やかに通過し、ボイドの言う競争上及び戦略上の優位性を高めます。
今後の投稿をお見逃しなく
目まぐるしくダイナミックに変化する現代のビジネス環境では、OODA ループを速やかに効率よく通過する能力と、全社的なエンタープライズ コネクテッドネスへのコミットメントとが、勝利の方程式となるでしょう。
ボイド大佐の空中戦での勝利と意思決定理論から得た教訓は、組織の成功に役立つだけでなく、必要不可欠なものです。緊急性を特徴とする時代を生き抜くにあたり、ボイド大佐の空中戦での勝利と意思決定理論から得た教訓は、組織の成功に関係があるどころか、必要不可欠なものです。
組織全体でディシジョン エクセレンスを引き出しませんか?成功に必要な、アクションにつながるインサイトをさらに掘り下げていきますので、今後のブログ記事もお楽しみに。