危機は外的要因ではなく社内のサプライチェーン プランニングに潜んでいる


効果的な統合ビジネス プランニング (IBP) プロセスで危機に対抗できる事業およびサプライチェーン運営を実現する方法をご紹介します。
2020 年代半ばに差し掛かり、これまで予測不可能だったものが予測可能になっています。ビジネス リーダーは今後発生する経済的または地政学的混乱による不安定化に向けて身構えているだけで、次に来る危機の最初の兆しに対応する準備はプランニング チームが行わなければなりません。しかし、多くの組織のプランニング プロセスに欠陥がある現実を踏まえると、口で言うほど簡単なことではありません。
これまでに私たち全員が経験してきた変化は、本当に目まぐるしいものでした。ここに至っては、宇宙人の侵略が差し迫っていると言われても驚きません。しかし実際の危機は、ほとんど制御しようのない外的要因ではなく、社内のプランニング プロセスに潜んでいることが多いのです。適応が不十分なプロセスは、組織全体を考慮する人がいなくなるレベルまで、部門ごとに区分されています。
社内の統合ビジネス プランニング (IBP) プロセスが役に立たなかったり、存在しなかったりすれば、どのような危機にも対応できなくなります。異なる業務部門間でフォーキャストやデータ分析の議論に貴重な時間が費やされ、組織全体を前進させる戦略に専念できなくなることがよくあります。
S&OP の枠組みにとらわれない考え方
以前のブログ投稿でも概説したように、IBP とは営業および業務プランニング (S&OP) をより成熟させた進化版です。S&OP は主に供給と需要を一致させることに重点を置いていますが、IBP はその一歩先まで踏み込み、財務および戦略プランニングという要素を取り入れています。S&OP、戦略、業務照合を組み合わせることで、どのような結果が得られるでしょう? 業務プランニングを戦略目標と同調させると、計画に対してリスクを調整し、軽減戦略を策定することができます。
良いことに思えますね。しかし、IBP に利点があるとは言え、S&OP から成熟した IBP への移行は、組織によっては困難な課題になることがよくあります。
IBP に移行する理由
よりスマートなコネクテッド プランニングのニーズは、かつてないほど高まっています。Peter S. Goodman 氏が執筆した The New York Times(英語) の記事によれば、以前は遠方、特に中国の製造拠点に依存していた主要企業が、現在は自社のサプライチェーンを現地化または分散化させる方向に移行しています。このように急速かつ困難な移行には、戦術的な調整だけでなく、ビジネス プランニングの策定方法を変革することも必要です。IBP は、このような変革のためのフレームワークを備えています。
サプライチェーンやビジネスが複雑化するにつれ、10 年前までは機能していた従来の S&OP プロセスが、現在求められているレベルの部門横断的なコラボレーションやデータ統合に対応できるほど頼りにはならなくなっています。成熟した IBP プロセスを導入しない限り、機会損失やコスト増大のリスクにさらされやすくなり、市場の予測不可能な変化に慌てて対応しようとして遅れを取ることになります。
IBP の導入に向けた三つのベスト プラクティス
十分に迅速に対応できるよう IBP を効果的に機能させるには、McKinsey の最近のレポート(英語)で概説されている、以下の三つの IBP ベスト プラクティスを考慮しましょう。
1.個々の部門ではなく P&L 所有者向けに設計する
P&L 所有者を念頭に置いて IBP プロセスを設計することで、シニア リーダーがビジネス全体に恩恵のある意思決定を行いやすくなります。これには主要部門のシニアレベルの参加が必要になるため、すべてのミーティングで意思決定を行うことができ、主要な問題に専念しつつ、簡単な意思決定には正式なミーティング以外で対応できます。最終的な目標は、統一されたリスク評価済みのビジネス プランニングを策定することです。それが製品リリース、ポートフォリオ パフォーマンス、需要および供給制約のような不確定要素を考慮した中期戦略の指針になります。
収益、利益率、又はコストに関する意思決定は、適切なレベル (ローカル又はグローバル レベル) の P&L 責任者が行います。シニア リーダーは IBP プロセスに積極的に参加し、チームのトレーニングをサポートし、意思決定と成果について責任を負います。
2.汎用のテンプレートからではなく、目的に合わせてプロセスを構築する
多くの企業が、その企業特有の課題に対処できない画一的なアプローチで IBP に取り組んでいます。代わりに McKinsey が推奨しているのは、シナリオを評価するのに適した情報を意思決定者に提供することに重点を置き、特定のビジネス ニーズに対応できるようゼロから IBP を設計する方法です。標準化されたテンプレートは、重要なデータと分析結果を整理して、このプロセスを効率化するのに役立ちます。
フォーキャスト、制約の管理、生産の最適化には、データ、手法、システムの一貫性を保つことが不可欠です。プランナーは、シミュレーションの精度や、プランニングと実行の整合性を確保しなければなりません。IBP サイクルの頻度も極めて重要で、主要な意思決定は毎月または四半期ごとにレビューし、短期的な変更には毎週の調整で対応します。
3.重要な意思決定の権限を与える
IBP プロセスの各ステップには、問題をその範囲内で解決するための意思決定の権限と、必要に応じて問題のエスカレーションを行うための明確なガイドラインが必要です。プロセスにおいて、誰が意思決定の権限を持つか、どのような場合に意思決定のエスカレーションを行うべきか、どのような方法でそれを実行するかを定義する必要があります。チームは効果的な意思決定のためのトレーニングを受ける必要があり、関係者全員が全面的に参加することが重要です。主要な関係者が参加しないと、プロセス全体が破綻する可能性があります。
このような意思決定の自由は、短期的なプランニングと実行の場合にも重要です。問題を早期に特定し、素早く解決することが成功の秘訣です。潜在的な問題を分類するとともに、問題の規模や影響に応じて意思決定のエスカレーションを行うタイミングなど、問題解決のための明確なステップを提示できるのが優れたシステムと言えます。
サプライチェーンの危機への対処
サプライチェーンのパフォーマンスを高める秘訣は、高度なシステムとツールによる支援が得られる、成熟したプランニング及び達成プロセスです。これには、すべての期間に及ぶ協調的な文化と、商業、プランニング、製造、ロジスティクス、調達の各チームをあらゆるレベルで結び付ける統合されたプロセスが必要です。
IBP は、現在の複雑かつ急速に変化する環境に対応するために不可欠なフレームワークです。IBP を単なる新しいプランニング ツールではなく、戦略的かつ全社的な取り組みと捉えている企業は、大きなメリットが得られるでしょう。
次に新たな危機の兆候が現れたときには、実際の危機は社外では起きず、重要なのは危機に対処できるプランニング プロセスを備えているかどうかだということを思い出してください。強固な IBP プロセスがあれば、次に何が起きてもすぐに対処できます。
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